治験でグレープフルーツが禁止なのはなんでですか?
治験では、「グレープフルーツ、グレープフルーツジュース及びグレープフルーツ含有食品の禁止」と規定されていることが多々あります。
治験だけでなく、特定の薬剤の添付文書にも近い内容の文書が記載してあります。
これは、グレープフルーツに含まれるフラノクマリンという成分が、薬剤を代謝する酵素であるCYP3A4の働きを阻害し、その結果、薬剤の効果を強めてしまうことになるからです。
CYP3A4の消化管内における存在部位は、
主に小腸上部であると言われています。
グレープフルーツで阻害されるものは、
小腸上皮細胞のCYP3A4のみであることが明らかになっていますが、
グレープフルーツの摂取量が過大であれば、その成分が肝臓まで到達し、
肝臓での代謝まで阻害する可能性があることも示唆されています。
また、グレープフルーツによるCYP3A4の阻害作用は不可逆的に生じるため、
一旦起こってしまうと阻害から回復するのに数日かかってしまいます。
治験というのは、薬剤を投与した時の血中濃度や副作用の発現など、
正確なデータを収集することが目的です。
しかし、それよりも優先されるのは、被験者の安全性です。
グレープフルーツにより代謝酵素が阻害され、血中濃度が上がってしまうなどのことは、
正確なデータが収集できなくなるばかりでなく、副作用出現の可能性も高まり、
参加してくれた方の安全性をも担保できないということになってしまいます。
これらのことを避けるために、
グレープフルーツの摂取禁止は規定されているのです。