治験で喫煙が禁止されているのは何故ですか?
治験ボランティア会にに登録する際、喫煙習慣について質問されたり、また、治験参加のための説明会で、禁煙について何度も念を押されたり、といったことは、一度でも治験に参加したことのある人なら誰でも経験することだと思います。
では、どうして治験に参加する際には、喫煙が禁止されているのでしょうか。
それは、たばこの成分中に、
肝臓の代謝酵素の働きを活発化させるものが含まれているからです。
具体的には、喫煙によってCYP1A系と呼ばれる代謝酵素が活発化し、
CYP1A系で代謝される機序を持つ薬の効き目が弱くなるといわれています。
また、喫煙によって交感神経系が刺激されるため、血管が収縮したり、
腸管の運動が亢進したりと、たばこは人体にさまざまかつ複雑な影響を及ぼします。
こういったたばこの影響を受けたまま薬を服用すると、
薬の本来の代謝・排泄の機序がおおいに乱されることになります。
以上の理由から、薬がどのように代謝され、
体外へと排泄されていくのかを調べること目的とする治験においては、
たばこの影響を排除することが必須となっているのです。
たばこの影響を排除する、という意味では、
受動喫煙の防止も大切です。
いくら被験者本人がたばこを吸わなくても、
同居している家族や友人が日常的に喫煙していたり、
また、たばこの煙が充満している環境で働いていたりすると、
やはり薬の代謝に及ぼす影響が無視できないからです。
さらに、被験者本人の安全性確保の面でも、禁煙は重要です。
先に述べたとおり、たばこは薬の代謝に複雑な影響を及ぼします。
治験では開発中の薬を服用するため、
治験薬とたばことの相互関係がまだ十分に分かっていない事も多いのです。
バレなければいいだろう、などという安易な考えのもとで喫煙したら
想定外の副作用が出た、など笑い話にもなりません。
場合によっては、その治験薬の開発が中止となり、
新薬を待ち望んでいる患者さんに届けられない、ということもあり得るのです。
たかがたばこ…と軽く見ず、
少なくとも指示された期間中はしっかり禁煙しましょう。
受動喫煙対策も忘れずに。